ZOOM音楽
関連授業
文理融合プログラム/メディアと芸術
「OTHER MUSICS」(2021年〜)
ZOOMUSIC公募
2022年12月に中井悠が企画を担当する東京現音計画のコンサートで演奏されるzoomusic作品を公募します。詳細はこちらまで。
「実験音楽」を、すでに評価が定まり、安全で、歴史化された実践として大学などでお勉強することほど、実験音楽の目的と相容れないことはないとつねづね思ってきました。だから、実験音楽を教える要請が来たとき、即座に断るつもりでいたのです。でもちょうど同じころにコロナ禍になり、ZOOMという新しいヴィデオ会議プログラムを使ってオンライン授業に移行することを余儀なくされました。そして当時教えていた音楽大学で、もっと伝統的な音楽に携わる作曲家や演奏者の教員たちが、ヴァーチャル環境で音楽を教えることの困難を嘆く姿を見るにつれて、逆にこのような状況こそ実験音楽を実験的な仕方で教える良い機会ではないかと思うようになったのです。

もちろん、ZOOMのようなオンライン・コミュニケーション・システムを使ったコンサートやパフォーマンスは昔からあり、またコロナ禍が進むにつれて日常茶飯事になってきています。そのような試みのほとんどは、オフラインで可能だった音楽の再現やシミュレーションを目指すものに留まっているように思われますが、こうした音楽を上演するための主要メディアの変化は、音楽の制作から演奏、そして視聴の方法全体に再考を促し、これまでとは異なる音楽を異なる仕方で創造するチャンスでもあるはずです。そしてそのためには、普段何気なく使っているZoomというシステムを、透明な媒体ではなく、固有のアフォーダンスとバイアスを持ち、特定のことを可能にする一方で、別のことを不可能にする「楽器」として見る必要があります。

じっさいZOOMにそのような観点から関わりはじめると、このシステムが実験音楽の教育ツールとしてとても優れていることが判明します。それはそこに含まれる不確定性の度合いと多様性によります。たとえば、それぞれの観客がイベントを経験する特定のデバイスや環境やスクリーン上のヴューを演奏者側がコントロールできないという事実は、もっとも伝統的な音楽家に対しても、それまで頼りにしてきた安定した枠組みを手放し、実験に身を委ねていくことを促す契機になります。そして音楽を可能にするさまざまな手段と条件をこれまで長らく問いただし、ひっくり返してきた「実験音楽」と呼ばれる実践の歴史は、このような課題に取り組むにあたって、とても役立つでしょう。

こうした考えから、ZOOMでしか演奏と視聴ができない音楽を構想するプロジェクトを多角的に展開しています。東京大学において文系理系を問わない前期過程(1、2年生)向けの授業、およびヴァージニア大学大学院作曲科コースのヴァーチャル・レジデンシー、また東京を拠点とする実験音楽のアンサンブルである東京現音計画とのコラボレーションなどを通じて、さまざまなZOOM音楽のパフォーマンスを制作し、実演しています。