東京現音計画#18
クリティックズ
セレクション2:
中井悠
ZOOMUSIC
ZOOMUSIC セレクション

COVID-19の蔓延はかつてない規模で人間の生活を一変させました。感染を防ぐためにソーシャル・ディスタンスが謳われ、物理的接触が禁じられる一方で、禁じられた物理的接触を補うためにヴァーチャルな接触を可能にするさまざまな遠隔技術がウイルスと同じくらいの速さで広がったことはまだ記憶に新しいでしょう。音楽の営みもまたこの流れに呑み込まれ、ZOOMをはじめとするオンライン・コミュニケーション・システムを使ったコンサートがあちこちで行なわれるようになりました。ただし、こうした試みのほとんどは、それまで慣れ親しんできた音楽体験のヴァーチャルな再現を目指すばかりで、メディア環境の変化を積極的にとらえて、作曲と演奏、そして視聴の方法を根底的に再考し、新しい音楽を新しいかたちで創造するきっかけとする試みはなかなか見当たりませんでした。

このコンサートではZOOMを、失われた営みをシミュレートするための透明な装置ではなく、固有の特性を持った「楽器」と見なし、その楽器によってのみ演奏・視聴可能な音楽のジャンルがあったとすればという空想にもとづき、世界各地の作曲家や音楽家からじっさいにそのようなZOOMUSICを集めて、オンラインとオフラインで同時に上演します。

あらゆるテクノロジーと同じく、ZOOMもそれを生み出した政治経済的な力学と歴史的な状況によって癖づけられ、さまざまなことを可能にしながら、さまざまなことを抑制することで機能しています。このシステム固有の信号処理の仕方、インターフェース・デザイン、音と映像の結びつきや不確定性の度合いなどをくわしく探れば探るほど、「演奏者/観客」、「楽譜/楽器」、「生演奏/再生」、「音楽/音楽以外」などの凝り固まった概念区分は解きほぐされ、これまでとは別の仕方で音楽を構想、演奏、経験することを余儀なくされます。たとえば音楽制作は映画制作とほとんど見分けがつかなくなり、「作曲」や「作品」というきわめて観念的な単位は疑いの目を向けられるかもしれません。またZOOMUSICの演奏をあえてオフラインで経験することは、テレビ番組の公開放送に立ち会うような感覚を生み出し、対面式コンサートの意味を変えてしまうかもしれません。

タイトルが喚起する動物園さながら、新奇の音楽と音楽もどきたちが会場の内外をうろつきまわる(ポスト)コロナ時代のコンサートにふるってご参加ください。たったひとつ事前にお願いしたいのは、オンラインとオフラインのどちらで経験するのかを、それぞれの観客が(良きクリティックさながら)セレクトすることです。
いつ
2022年12月19日 19:00 (日本時間)
どこ + どのように
A: オンライン
- このフォームよりお申し込みください(2022年12月18日(日)24時まで)。
- 無料

B: オフライン

- 杉並公会堂小ホール(東京都杉並区上荻1-23-15): アクセス
- 全席自由(税込)
前売一般3000円、前売大学生・専門学校生1000円、当日券3500円
カンフェティ割2500円(カンフェティ限定、先着順)
高校生以下無料(要予約。問い合わせ先のメールアドレス宛にお申し込みください)
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=69420&

なに
福田考樹: staff meeting in progress (2022)
古賀晶子: m(usi)c (2022)
Varun Kishore: peculiar convergence chamber (2022)
Jenn Kirby: music: a movement (2022)
G Douglas Barrett: i am sitting in a zoo (on zoom) (2022)
荒野愛子: music, in volumes | 巻物音楽 (2022)
だれ
プログラム監督: 中井悠 (S.E.L.O.U.T.)

サクソフォン: 大石将紀
チューバ: 橋本晋哉
ピアノ: 黒田亜樹
パーカッション: 神田佳子
エレクトロニクス: 有馬純寿

カメラ: 高草木倫太郎、有吉玲 (S.E.L.O.U.T.)
MCその他: 中井已未

主催:東京現音計画

舞台監督:鈴木英生(カノン工房) 
制作:福永綾子(ナヤ・コレクティブ)
フライヤー&ロゴデザイン、写真:松蔭浩之

協力:東京大学副産物ラボ+芸術創造連携研究機構、帝塚山学院大学、有限会社ハリーケン、モモ・カンパニー
助成:公益財団法人野村財団、芸術文化振興基金助成事業

お問い合わせ: nayac@mc.point.ne.jp